問題文及び解答は経済産業省のHPにある「過去の計量士国家試験問題」から引用しています。
解説は私の見解になります。解説が間違っている可能性もありますので、予めご了承ください。
問6~10の内容は?
「環境計量に関する基礎知識(化学)」の問6~10の内容は以下の通りです。
- 問6 有機化学(芳香族化合物)
- 問7 有機化学(共役酸・塩基)
- 問8 有機化学(物質の安定性)
- 問9 有機化学(物質の精製)
- 問10 無機化学(水素)
問6 有機化学(芳香族化合物)
問6
濃硝酸と濃硫酸の混合物による一置換ベンゼンのモノニトロ化反応における、置換基Xの配向性に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。ただし、反応式中生成物の構造式は、オルト位、メタ位またはパラ位のいずれかにニトロ基が一つ置換されていることを示す。また、反応はそれぞれ最適条件で行うものとする。
- トルエン(X=CH3)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- 安息香酸メチル(X=COOCH3)は主にメタ体を与える。
- アセトアニリド(X=NHCOCH3)は主にメタ体を与える。
- クロロベンゼン(X=Cl)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- (トリフルオロメチル)ベンゼン(X=CF3)は主にメタ体を与える。
正解と解説
3 アセトアニリド(X=NHCOCH3)は主にメタ体を与える。
ベンゼン環にすでに存在している置換基は、反応性及び反応の配向性に影響を与えます。
主な置換ベンゼンにおけるニトロ化の配向性はこちらです。
1. メタ配向性不活性化基
- -N(CH3)3
- -NO2
- -CO2H
- -CN
- -CO2CH3
- -COCH3
- -CHO
2. オルト-パラ配向性不活性化基
- -F
- -Cl
- -Br
- -I
3. オルト-パラ配向性活性化基
- -CH3
- -OH
- -NHCOCH3
- 正しい。トルエン(X=CH3)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- 正しい。安息香酸メチル(X=COOCH3)は、ーCOOCH3が電子吸引性であるため、主にメタ体を与える。
- 誤り。アセトアニリド(X=NHCOCH3)は、ーNHCOCH3が電子供与性であるため、o、p配向で、主にオルト体とパラ体の混合物となる。
- 正しい。クロロベンゼン(X=Cl)は、ーClが電子供与体があるため、やや活性のo、p配向で、主にオルト体とパラ体の混合物となる。
- 正しい。(トリフルオロメチル)ベンゼン(X=CF3)は、ーCF3が電子吸引性であるため、主にメタ体を与える。
問7 有機化学(共役酸・塩基)
問7
次のアンモニアを含むアミン類(ア)~(カ)について、それぞれの共役酸のpKa値(水中、25℃)の大小関係として、誤っているものを一つ選べ。ただし、pKa=ーlogKa(Ka:イオン強度が0のときの酸解離定数)とする。
- (ア)>(イ)
- (イ)<(ウ)
- (ウ)>(エ)
- (エ)<(オ)
- (オ)>(カ)
正解と解説
2 (イ)<(ウ)
酸の強さは水溶液中での解離のしやすさで決まります。塩酸は、水素イオンを放出しやすいので強酸で、酢酸は放出しにくいので弱酸です。この解離のしやすさを表す数が酸解離定数(Ka)です。これはそれぞれの酸に固有の定数です。
M-hubより引用
酸性が強いとpKaが小さく、アルカリ性が強くなると値は大きくなります。
今回の場合、Nの非共有電子対(孤立電子対)濃度が高いとアルカリ性が強くなってpKaが大きくなり、濃度が低くなると酸性が強くなってpKaが小さくなります。
- 正しい。CH3CH2-はH-よりもやや電子供与性(電子を与える)があるため、(ア)の方がNの非共有電子対濃度は高くなります。
- 誤り。ベンゼン環は電子吸引性(電子を受け取る)が強いため、(イ)の方がNの非共有電子対濃度は高くなります。
- 正しい。Cl-は電子吸引性が強いため、(エ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
- 正しい。Cl-の方がH3CO-より電子吸引性が強いので、(エ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
- 正しい。-NO2の方がNの非共有電子対をより強く吸引するため、(カ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
問8 有機化学(物質の安定性)
問8
次の炭素陰イオン(ア)~(エ)の安定性の大きい順として、1~5の中から正しいものを一つ選べ。ただし、炭素陰イオンは、いずれも気相または代表的な非プロトン性極性溶媒であるジメチルスルホキシド中で生成されたものとする。
- (ア)>(イ)>(ウ)>(エ)
- (イ)>(ウ)>(エ)>(ア)
- (ウ)>(イ)>(ア)>(エ)
- (エ)>(ウ)>(イ)>(ア)
- (ウ)>(エ)>(イ)>(ア)
正解と解説
4 (エ)>(ウ)>(イ)>(ア)
炭素イオンの安定性は「電荷の偏り」で決まります。
電子が偏っていない(=非局在化)状態の方が安定です。
(ア)CH3の炭素陰イオンは、固定され局在化しているので、最も安定性が小さいです。
(イ)-CH2はベンゼンの炭素と二重結合を図のように作ることができますが、H同士の立体障害のため、このような非局在化されることは困難です。しかし、非局在化が全くされないということではないので、(ア)よりは安定であるといえます。
(ウ)図のように陰イオンが非局在化する2つの場合があるため安定です。
(エ)図のように陰イオンが非局在化する3つの場合があるため(ア)、(イ)、(ウ)よりも安定です。
以上から4.(エ)>(ウ)>(イ)>(ア)が正解です。
問9 有機化学(物質の精製)
問9
不純物を少量含む物質の純度を高めるための方法に関して、次に示した組合せの中から、誤っているものを一つ選べ。
正解と解説
3 塩化ナトリウム 塩化マグネシウム 水溶液の電気分解
- 正しい。「蒸留」とは沸点の違いによって純度を高める操作です。液化した窒素の沸点は-196℃、酸素の沸点は-183℃です。この沸点の違いによって純度を高めることができます。
- 正しい。「昇華」とは固体が液体にならずに、直接気体になることです。常温常圧下で昇華性を持つ物質は「よう素」、「二酸化炭素(ドライアイス)」、「ナフタレン」、「シュウ酸」などが挙げられます。したがって、加熱によりよう素を昇華させることで、少量のよう素カリウムから純度を高めることができます。
- 誤り。水溶液をアルカリ性にすると、難溶性の水酸化マグネシウムが生成し塩化ナトリウムの純度を高めることができます。
- 正しい。再結晶とは、粗結晶から不純物を取り除いて純度の高い結晶を作り出す操作のことです。硝酸カリウムは温度によって溶解度(100gの水に溶ける量)が大きく変化します。高温の水に飽和している硝酸カリウムは、冷却すると結晶となって取り出すことができます。一方で、塩化ナトリウムの溶解度は温度を変えてもほとんど変化しません。したがって、高温の水に飽和させた後、冷却して硝酸カリウムを再結晶させると、硝酸カリウムの純度を高めることができます。
- 正しい。クロマトグラフィーとは固定相と移動相の相互作用により、試料中の化学成分を分離するための方法です。シリカゲルは表面のシリノール基が水素結合能を持っているので、移動相中の水素結合を吸着します。o-ニトロフェノールは分子内で水素結合をしていますが、p-ニトロフェノールは、分子間で水素結合しているため、吸着しにくいのはo-ニトロフェノールです。したがって、こちらが先に通過し分離することになります。
問10 無機化学(水素)
問10
水素の単体および化合物に関する次の記述の中から、下線部に誤りを含むものを一つ選べ。
- 常温常圧で安定な水素の単体はH2のみであり、同素体は知られていない。
- 自然界に存在する水素(H2)2.000 gの分子数は、6.022×1023個よりも少ない。
- 水素(H2)は、ニッケルを不均一触媒として、エチレン(エテン)に付加してエタンを与える。
- 14族元素の水素化合物CH4、SiH4、GeH4、SnH4は、分子量の大きいものほど沸点が高くなる。
- 常温常圧の第2周期元素の水素化合物LiH、NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合である。
正解と解説
5 常温常圧の第2周期元素の水素化合物LiH、NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合である。
NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合ですが、LiHはイオン結合です。
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