問題文及び解答は経済産業省のHPにある「過去の計量士国家試験問題」から引用しています。
解説は私の見解になります。解説が間違っている可能性もありますので、予めご了承ください。
問11~15の内容は?
「環境計量に関する基礎知識(化学)」の問11~15の内容は以下の通りです。
- 問11 有機化学(異性体)
- 問12 有機化学(酸性度)
- 問13 有機化学(配向性)
- 問14 有機化学(炭化水素)
- 問15 化学電池
問11 有機化学(異性体)
問11
鏡像異性体をもたない分子またはイオンの構造式として、正しいものを一つ選べ。
正解と解説
- 鏡像異性体とは(引用:コトバンク)
- 原子の立体配置が互いに鏡像の関係となっている立体異性体。エナンチオマー。対掌体。鏡像体。
鏡像異性体は互いに、「右手」と「左手」のような「構造は一緒だが重ねることができない」関係にあります。
鏡像異性体かどうかは「不斉炭素原子」の有無で見分けることができるよ!
不斉炭素原子とは結合の4本の手に全て違う原子団がついている炭素のことをいいます。
そして、この不斉炭素原子がある物質は「鏡像異性体」を持ちます。
問題文にある選択肢1を見てみましょう。
1番上の炭素が結合している原子団は、=O、-OH、-CHOHCH3です。4本の結合の手のうち、2本が同じOと繋がっているため、不斉炭素原子ではありません。
2番目の炭素が結合している原子団は、-COOH、-H、-OH、-CH3で、4本すべて違う原子団のため、「不斉炭素原子」となります。
3番目の炭素は、-CHOHCOOH、-H、-H、-Hで、4本のうち3本がHと繋がっているため、不斉炭素原子ではありません。
以上のことから、選択肢1の物質は「鏡像異性体」を持つ分子になります。
それでは、選択肢3の物質を見てみましょう。
1番上の炭素が結合している原子団は、=O、-OH、-COOHです。4本の結合の手のうち、二重結合である2本が同じOと繋がっているため、不斉炭素原子ではありません。
2番目の炭素も、-COOH、=O、-OHで、Oの二重結合があり、不斉炭素原子ではないことがわかります。
以上のことから、選択肢3の物質は「鏡像異性体」を持たない分子になります。
問12 有機化学(酸性度)
問12
次のカルボン酸(ア)~(エ)について、水中での酸性の強さの順として、正しいものを1~5の中から一つ選べ。ただし、不等号で大きい方が強い酸性を示すものとする。
(ア)CH3COOH
(イ)CF3COOH
(ウ)CH3CH2COOH
(エ)CF3CH2COOH
- (ア)>(ウ)>(イ)>(エ)
- (イ)>(エ)>(ア)>(ウ)
- (ウ)>(イ)>(ア)>(エ)
- (エ)>(ア)>(ウ)>(イ)
- (エ)>(イ)>(ウ)>(ア)
正解と解説
2 (イ)>(エ)>(ア)>(ウ)
カルボン酸(R-COOH)の酸性度は以下の表のとおりです。
表 種々のカルボン酸の酸性度
構造 | Ka | pKa |
CF3CO2H | 0.59 | 0.23 |
CH3CO2H | 1.75×10-5 | 4.76 |
CH3CH2CO2H | 1.34×10-5 | 4.87 |
CH3CH2OH(エタノール) | (1.00×10-16) | (16.00) |
ふっ素Fは水素Hよりも電気陰性度が大きく電子を吸引する力が強いので、酢酸基のH+は遊離しやすくなります。そのため、Kaは低い値となっています。
(イ)CF3COOH >(エ)CF3CH2COOH >(ア)CH3COOH >(ウ)CH3CH2COOH
問13 有機化学(配向性)
問13
フェノールに十分な量の臭素水を加えたとき、得られる主生成物の構造式として正しいものを一つ選べ。
正解と解説
フェノールはベンゼン環にヒドロキシ基が1つ付いた有機化合物です。
ヒドロキシ基は「オルト-パラ配向性活性化基」に分類されています。
- 配向性とは?
- 置換基によって、特定の位置で反応が優先的に起こるようになること。
芳香族化合物の場合、オルト-パラ配向性とメタ配向性の2種類がある。
- 活性化基とは?
- 反応を促進するような置換基のこと。逆に反応を抑制するような置換基は「不活性基」と呼ばれる。
ヒドロキシ基のあるフェノールはオルト位とパラ位に置換が起きやすいです。
よって、フェノールに十分な量の臭素水を加えると、オルト位とパラ位にブロモ基(-Br)がついた
選択肢3の構造式を持つ化合物が主生成物となります。
問14 有機化学(炭化水素)
問14
200℃、300 atmの高温高圧下でエチレンと1,3-ブタジエンとの反応から、主生成物として炭素数6の炭化水素が得られた。この炭化水素の名称として、正しいものを一つ選べ。
- ベンゼン
- ヘキサン
- 1-ヘキセン
- シクロヘキサン
- シクロヘキセン
正解と解説
5 シクロヘキセン
問15 化学電池
問15
燃料電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置で、水素を燃料とする場合、以下の反応が進行する。
H2 + 1/2 O2 → H2O
25℃において水の標準生成ギブズエネルギー△Goが-237 kJ mol-1であるとき、この燃料電池の標準起電力Eoは幾らか。次の中から最も近いものを一つ選べ。ただし、ファラデー定数をF(96500 C mol-1)、化学反応で移動する電子数をnとすると、△Go = -nFEoの関係が成立するものとする。
- 0.41 V
- 0.59 V
- 0.82 V
- 1.23 V
- 2.46 V
正解と解説
4 1.23 V
燃料電池の反応は、
- 負極 H2 → 2H+ + 2e
- 正極 O2 + 4H+ + 4e → 2H2O
この反応では電子2個が移動するため、n=2となります。
問題文から△Go=-237 kJ mol-1、F=96500 C mol-1と示されているので、これらの数値を△Go = -nFEoの式に当てはめて標準起電力Eoを求めると、
Eo=△Go/(-nFEo)= -237×1,000 / (-2×96,500) ≒ 1.23 V
参考文献
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